お知らせ
令和3年度 中学生による「税についての作文」受賞作品を掲載しました。
「税金の種類と使い道について」
「杉並青色申告会会長賞」受賞作品
税金の種類と使い道について 高橋晴さん
私にとって一番身近な税金は消費税です。買い物をする時、当たり前に支払っていましたが、その税金をどう使っているのかを考えたことはありませんでした。
まず、税金には国に納める国税と地方自治体に納める地方税があります。税金の種類を大きく分けると個人の所得に対して掛かる所得税、会社企業の所得に対して掛かる法人税そして一番身近な消費税があります。
集められた税金は、医療、年金などの社会保障費、公立校の支援や援助など教育の発展のため、道路整備や災害対策などの公共事業費など、色々な公共サービスに使われます。また議員、公務員、自治体職員などの給料も税金から支払われます。
色々な費用の中で、特に気になったのが国債費です。過去に国が作った借金の返済費用」です。国民が直接利用やサービスを希望したわけではないけど、借金までして使われたために全国民が税金という形で借金返済をしている事になります。
「税金の無駄遣い」という報道をよく耳にします。国債費が膨れるにつれ、税金の無駄遣いに注目されます。公共施設や宿泊施設を莫大な予算をかけて建設し、毎年の維持費も掛かっています。しかし、利用者は少なく毎年赤字で、挙句の果てに一円で売却されたという報道があったそうです。最近で一番印象に残っているのは、コロナ感染拡大予防対策のため政府が全世帯に配布した布製マスク、いわゆる「アベノマスク」です。かかった費用はマスク購入と郵送で、当初の発表は四六六億円でしたが国が公表した文書の内容を分析した人によると、五百億円を超えたようです。言うまでもなくこれは全部税金です。残念ながら、配布された後に街で利用している人を見かけたことはありませんでした。
「国民の税金を無駄遣いしている」という批判的なインタビューが多いですが、災害時の自衛隊出動や警察、消防、ゴミ収集などなくては困る事がほとんどです。私たちが気づかない内にお世話になっている公共サービスがたくさんあります。
そして、その税金の使い道を考えているのが国会議員、地方議員です。その議員の方々は、選挙で国民が投票して決まっています。批判ばかりするのではなく選挙の際には、各立候補者が何を公約にあげているのか、しっかり見開きし国民も責任を持って投票しなくてはならないと思います。「どうせ変わらないから」と投票に行かないと未来で「税金の無駄遣い」を生むかもしれないと感じましたなので、私が投票権を持ったら必ず投票に行こうと思います。
「税によって救われた命」
全国納税貯蓄組合連合会優秀賞
税によって救われた命 大和田美鈴さん
十月十八日。この日は弟の誕生日。弟は二十五週の超低体重出生時で生まれ、新生児集中治療室に四ヶ月半入院した後、一歳で原因不明の急性脳症によって脳の機能が半分奪われてしまった。それにより後遺症が残り、自ら歩くことも会話することもできない弟になってしまった。それでも、いたずら好きで元気な弟は、今年で小学六年生になった。
日本には未熟児養育医療制度という制度がある。これは身体の発達が未熟なままで産まれたために入院養育が必要な乳児に対し、医療費を国で負担する制度のことだ。弟はこの制度によって救われた。もし、この制度がない国で生まれたら、一体どれくらいの医療費がかかるのか。新生児集中治療室に一日入院するだけで約二十万円の費用がかかる。弟は四ヶ月半、つまり百三十五日間入院していたことになるので、約二千七百万円の費用がかかっていたことになる。また、保育器は一台使うのに約二千万円の費用がかかる。他にも人工呼吸機の費用もあるが合計で約四千七百万円以上の費用がかかることが分かった。これを母に言ったら、「うちは破綻だね。」と言っていた。それだけではなく、弟も死んでいたのかもしれない。また、退院してからの医療費も弟は高額にかかっていた。薬代や一週間に一度の通院、訪問看護、放課後デイサービス、ショートステイ。数え切れないほどの医療費があった。しかしそれは全て見ず知らずの人達が集めた税によってまかなわれていた。
税は無意味だ。国民に負担がかかるから減らしてほしい。そう思う人はいるだろう。しかし、今もなお税によって救われた命があり、たとえ意識していなくても今まで生き続けてこれたのは税のおかげではないだろうか。
そして、人間は一人では生きられない。それは税から分かる通り、全国民の人たちが税を出し、そのお金が誰かのためになっている。みんなで協力して、みんなで助け合う。なんて人間らしいのではないかと思う。
私は税について考えるまで、弟の医療費がほとんど税によって出されていたことなどちっとも知らなかった。何も知らずに今まで生きていたと思うと、悔しくてたまらなかった。しかし、この機会があったおかげでたとえ直接助けられなくても、税を通して人を助けたいと思うことができた。
私は将来、お医者さんになりたい。そう思えたきっかけは、弟がいたからだった。たとえ会話ができなくてもいつも笑顔が絶えない弟が大好きだった。これから弟の病気は治らないかもしれない。ただ、他の誰かの命を救うことができるのなら、私は弟の分まで生きることができたと言えるのではないだろうか。もし、この世の中に税がなくて弟と出会えていなかったら、きっとこうは思わなかっただろう。弟の命を救った税を集めてくれた見ず知らずの人達に恩返しをしたい。そしていつか人の命と心を救うお医者さんになりたい。
「税金が実現してくれる安全で豊かな社会」
東京国税局管内 納税貯蓄組合連合会優秀賞
税金が実現してくれる安全で豊かな社会 早川貴久さん
今回この課題を頂いて、税金について調べてみると、警察や消防、医療費、市町村のゴミの処理、公共設備の整備、教育など、僕達の済む世界のありとあらゆるものが、税金で支えられていると改めて感じました。
その中で、僕が特に身近に感じている税金の使い道二つについて、述べたいと思います。
一つ目は、「乳幼児医療費助成制度」です。
僕は小さい頃、とても体が弱く、度々病院に通いました。夜間に四十度を超える高熱が出て、救急外来にかかったことも何度かありました。その頃の話をよく僕にする母に、この制度について訊いてみました。
母によれば、小さい子供は病気にかかりやすいので、頻繁に病院を受診する。だから、本来なら医療費もかなりかかる。医療費を助成してもらえることで、子供が誰でも平等に安心して病院にかかれる、この制度は本当にありがたいものだと言いました。
僕は、この話を聞いて、この制度は「みんなで子供達を無事に育てよう」という考えで創ってくれた制度なのではないかと感じました。子供が安心して大きくなれる。世界にはそうでない国もあると聞くので、僕は日本に生まれて幸せだと思いました。そして、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。
二つ目は、「一人一台、小、中学校、パソコン・タブレット導入」です。今年度から、僕の住む杉並区の中学校では、一人一台タブレットが貸与されました。小学校では既に始まっていると聞いています。合わせて、自宅にWi-fi環境がない人には、ルーターも貸し出されました。これによって、自宅にインターネット環境がなかった人も、インターネットで調べもの学習などができるようになりました。また先生方がタブレットを取り入れ、みんなで意見やレポートを共有して進める授業をして下さっています。生徒一人一人にタブレット一台を貸与、インターネット環境の整備というのは、大変な予算だろうと思いました。
税金について、特に前述の二つの制度から学び、感じたことは、税金は、必要だけど個人ではできないことを、税金によって創られた制度が実現し、社会を安全で豊かなものにしてくれているということです。
今回、税金について、深く考え、学ぶことができ、税金はお互いに支え合って生きていくために必要なものだと思いました。僕も税金によって創られた制度に支えてもらって大きくなったことを忘れず、大人になったら、今度は僕達が、今まで支えて下さった方々の生活を支え、これから育つ子供達の未来を守り、みんなが生きる社会をより良いものにできるように、頑張って働いて納税したいと思いました。
「幸せのサイクルの「鍵」」
東京国税局長賞
幸せのサイクルの「鍵」 渡邊杏香さん
以前、消費税引き上げに関する国民アンケートを目にしたことがある。そのアンケートでは、約六十%の人が負担増等の理由で、増税に反対していた。なぜ私達は増税に対して嫌悪感を抱くのだろう。また、日本の幸福度は低いと言われている。税金が幸福度を低くしているのだろうか。私は、その要因が「税金」が存在するからではないと考える。
税金に対する嫌悪感には二つの原因があるように思う。一つ目は、政治家が私的な目的で税金を利用する事件が繰り返し報道されることだ。これにより、国民が政治家や税金の用途に対して不信感を持ち、それが税金を払いたくないという気持ちに繋げるのだ。
二つ目は、税金が実際誰にどのような形で活用されえているのか、具体的に国民が把握できてないことだ。自分の払った税金が本当に国民のために使われているかわからない人も多いのではないか。このような状況を改善すべく、一つの例を挙げたいと思う。
幸福度が高いと言われている国の一つにデンマークがある。デンマークの消費税は、二十五%と日本よりも遥かに高い。なぜこんなに税金が高いにも関わらず、幸福度が高いのか。そこには、デンマーク特有のサイクルが関係している。
デンマークでは、税金が様々な年代の納税者に還元され、それが日常生活で実感できる「見える化」がされている。例えば、出産や教育費、医療費が無料であり、十八歳以上の学生には国から生活費が出される。最大で前職の九割の失業手当が保証されるなど様々な国民が還元を実感できる。このような制度により、デンマークの人々は税金が高いか低いかというより、富の分配が上手くされているかという点に敏感だという。ディスカッションも活発で、国政選挙では投票率が八割を下回った事がないそうだ。また、政治家もボランティア精神で働いており、皆のお金で皆が幸せに暮らすという共生の精神が浸透し、幸せのサイクルが回っている。
れを例に日本の改善策を考える。まずは、税金の「見える化」だ。日本にも助成制度はあるが、十分に認知されているだろうか。もっと学校や家庭で、税金の活用方法について知る機会を増やすべきだ。税金の友好的な還元を実感し、「見える化」が実現できれば、富の分配に興味を持つようになり、政治への積極的な参加に繋がるだろう。選挙の投票率の改善も期待できる。
もう一つは、政治家がより奉仕活動を意識することだ。私的な目的のためではなく、国の発展を目指す高い志で職務に就き、国民との良好な信頼関係を築いてほしい。
このような改善策に取り組むことで、国民の税金に対する嫌悪感がなくなると考える。税金は嫌悪感を生むものでも、幸福度を下げるものでもなく、私たちの生活を豊かにする「幸せのサイクルの鍵」なのである。
中学生向け租税教育 ~税の作文を書こう~
(公社)杉並青色申告会では令和3年8月4日、中学生の税の作文の作成に役立てて頂くため、税の知識についての説明や作文の書き方についてのセミナー『税の作文』書き方教室を行いました。
税金のイメージはどんな色?税金は何種類あるの?・・・など税金の勉強を行い、作文を書くにあたっての基礎知識(他の作文作成にも役立つ内容でとってもオススメです!)などを学びます。
令和4年度以降も開催の見込みですので、ぜひご応募お待ちしております。
(参考)税の作文を書こう令和3年度プログラム
- 税を知ろう(税金の種類と税金の行方)、将来の働き方について考えよう
- 税金ボードゲームをやってみよう
- 実際に税の作文を書いてみよう