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税金からみる後期高齢者医療制度 2
超簡単!税情報 2008年8月8日発行(第154号)
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□□□「超簡単!税情報 初心者のための税のいろは」□□□
発行元:社団法人 杉並青色申告会 2008/8/8 No154 読者数:5126人
https://www.aoiro.org/
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皆さんこんにちは。
今回は、福田首相が内閣改造を行ない、内閣の早急な課題の一つとして、連日
「後期高齢者医療制度」(通称:長寿医療制度)について報道されています。
今回は、税金や保険料の負担についてご説明します。
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┃■身近な税の話 「税金からみる後期高齢者医療制度 2 」 ┃
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年金からの天引き(特別徴収)で税金が高くなる?!
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国民健康保険制度との違いで取り上げられているのは、保険料の徴収方法で
す。国民保険料は世帯主が世帯全ての分を納付書や口座引落で収める(普通徴
収)であり、今回の後期高齢者制度は
1)被保険者それぞれが
2)原則年金から天引きされる(特別徴収)
という違いがあります。
年金から天引きされる(特別徴収)されると、保険料に変化はないので、家計
への負担が変わらないように思えますが、実は「所得税と住民税」が変わりま
す。
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例)夫(世帯主)が年金250万円、
妻の年金が80万円で夫婦とも被保険者の場合
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前回の説明を基に保険料を計算すると
夫が101,400円、妻が37,800円の後期高齢者制度の保険料となります。
今までの国民健康保険制度での「普通徴収」の考え方だと、夫分の101,400円
と妻分の37,800円の両方が世帯主に請求され支払います。
それが、後期高齢者制度では、「特別徴収」となり夫と妻のそれぞれの年金か
らそれぞれの保険料が天引きされます。
保険料総額に変化はありませんが、税金の世界では大きく異なります。
今までの国民健康保険制度は夫が妻の分も支払うことができたので支払った保
険料は所得税や住民税の「社会保険料控除」に含めることができました。
しかし、後期高齢者制度では、妻の保険料は「妻の年金」から差し引かれる
(支払われる)のであって夫は支払っていません。夫が支払っていないという
ことは、「夫の社会保険料控除には含められず」「妻の社会保険料控除に含め
る」となります。
ここで問題が夫と妻の税負担です。
夫の保険料は250万円-120万円(公的年金控除)-101,400円(社会保険料控除
(後期高齢者制度保険料))(※)-48万円(配偶者控除)-38万円(基礎控
除)=338,600円(課税すべき所得金額)
338,000円×5%=16,900円(所得税)
(注)所得控除は、基礎控除と配偶者控除と健康保険料のみとする。
(※)今までの国民健康保険制度だと、社会保険料控除に妻分の37,800円を加
えることができました。
その税負担の違いは所得税で37,800円×5%=1,900円
住民税で37,800円×10%=3,800円で合計5,700円となります。
この税負担の増加は既に導入されている「介護保険」にも適用され、妻分の
介護保険料は50,400円
(第4段階※)だと50,400円×(5%+10%)=7,600円が負担増となります。
(※)介護保険料は第1~7段階あり、第4段階は本人が区民税非課税で他の
世帯員が区民税課税の方
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保険料の上限額の違い
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国民健康保険制度では平成20年度から47万円(医療分)、12万円(後期高齢者
支援分)の合計59万円で、平成19年度は53万円でした。
後期高齢者制度では、50万円です。
金額だけを比べると若干下がっていますが、計算の基礎が異なり、結果として
大きく異なります。
国民健康保険は「世帯」で計算され、後期高齢者制度は「被保険者」で計算さ
れます。
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例)夫(世帯主)が不動産所得800万円、
妻が不動産所得800万円で夫婦とも被保険者の場合
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今までの国民健康保険では、夫婦合わせた「世帯」で53万円の保険料でしたが
後期高齢者制度では、50万円づつで合計100万円の負担となり、約2倍となりま
す。
また、子供が個人事業者だと上記に子供の分の国民健康保険料が加わります。
これは、二つの制度が計算方法や考え方が異なることにより出てくる保険料の
違いです。
特に検討の余地があると思われるのは、75歳以上で現役で働いている方での社
会保険(政管健保等)に加入されている方は、社会保険を抜けて後期高齢者医
療制度に加入しなければならないということです。
社会保険は会社負担分があり、労働者にとっては非常に有利です。
また、給与所得だけで保険料を算出するので、他に不動産所得等のある方にと
っても有利になります。
それが受けられないということになると、労働意欲の低下につながりかねませ
ん。
「高齢者や支える若い世代それぞれが安心して暮らせる社会を目指す」という
趣旨にそぐわない面もあるように思えます。
制度は開始したばかりですので、運営する中で必要に応じて議論をし、よりよ
い医療制度になっていくことを期待します。
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Q.会社に勤務して、社会保険(政管健保)に入っています。来年75歳になり
ます。
75歳からは社会保険から後期高齢者制度に移りますが、今まで社会保険に加入
していたことにより厚生年金が支給停止となっていましたが、後期高齢者制度
になると年金は支給されますか。
A.支給されません。年金の支給停止の基準は変更されません。定時改定の際
に、今までの制度で被保険者に該当する場合は、会社は社会保険事務所に報告
します。それに基づいて社会保険事務所は判断します。
なお、給与所得がなく、給与所得以外(不動産所得等)の所得がある年金受給
者は今までどおり支給停止とはなりません。
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