相続税対策の注意点
第1回 家族名義の預金
贈与とは民法で「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる契約である。」と定めています。
つまり、与える側と受取る側の双方で意思表示されて初めて贈与が成立します。
例えば、父が息子名義の預金口座を作って貯金している場合、息子はその口座の存在を知らなければ、父から息子への贈与は成立しません。息子は贈与されたと認識していないので、民法上の贈与契約が成立しないことから、税務上も贈与が行われたと判断されません。
具体的には・・・
名義預金とは、形式的には家族の名前で預金しているが、実質的にはそれ以外の真の所有者がいる、つもり、それら親族に名義を借りているのに過ぎない預金をいいます。
親としては、相続税対策として生前にお金を贈与したいが、贈与したら高級車を購入したり、海外旅行に行ったりして散財してしまうのではないかとの心配もあります。そこで「お金を贈与したことにして贈与税の申告はするが、実際は、親が息子や娘の名前で預金通帳を作り、親の手元に置いて管理しておき、そのことを子供だちは知らずにいて、親が亡くなってから初めて自分名義の預金口座の存在を知る。」このような場合に名義預金が発生することになります。
親が息子の贈与税を申告していたが、父と同じ銀行に息子名義の預金でそのまま残っていた。
相続税調査で息子は貰ったと主張しましたが、名義預金の疑いが濃厚であり、事実関係を厳しく追及されました。贈与税の申告だけでは、息子が知らないところで親が勝手に申告しているケースも多々あり、名義預金と判断されることが多いようです。
娘が20年以上毎年贈与税の申告をしており、実際にその一部を生活費等に使い、残った金額を自分の名義で預金口座に残しておいた。
貰ったものとして贈与が認められる。
父が認知症のため4〜5年施設で口も聞けずに寝たきり状態で過ごしていたが亡くなった。その間に父の口座から息子の口座へ貰ったとして預金が振り込まれていた。
上記1と同様、厳しく追及されます。そもそも父が贈与するという意識能力がなかったうえに、勝手に息子が自分の口座へ移したとして名義預金と判断され、さらに悪質な相続税逃れ、いわゆる脱税行為として重加算税の対象となります。
家族名義の預貯金と判断されないために必要なことは?
家族名義の預貯金が、単に相続人の名義であり本当の所有者が被相続人と判断されると、この預貯金は相続財産に含めなければなりません。相続税の税務調査での調査官の見方と名義預金と判断されないために必要なことをあげてみます。
なぜ被相続人と同じ印鑑で口座を開設しているのか? また、相続人が遠方に住んでいるのに、なぜ被相続人の自宅近くの支店に口座があるのか?
財産を貰った人がその口座、印鑑を管理する。
誰が口座を開設し、誰が入金し、誰が通帳や印鑑を管理しているのか?
→預貯金を自由に使うことが出来る。
贈与の事実があるかどうか?
贈与の認識はあったのか、贈与契約書、贈与税の申告の有無は?
贈与契約書を作成することで、あげた人と貰った人が双方で認識し、財産をもらった人が申告することで「財産をもらいました」という意思表示することにもなる。