相続・贈与の注意点
第5回 税理士による相続の基礎(1)
Q
私の父はアパート6室を賃貸しており、青色申告で毎年確定申告をしていました。
今年4月25日に父が亡くなりましたが、父の確定申告は何時、誰が行うのでしょうか?
このアパートは、まだ遺産分割協議が確定していませんが、母が引き継ぐ予定で、今後は、母が確定申告をすることになると思われますので、その時に父が亡くなるまでの分も併せて申告すればよいのでしょうか?
相続人は、母と私(長男)、弟(次男)の3人です。
A
親が亡くなると、相続税の申告との納税に関心が向きがちです。
相続税の申告期限は、亡くなってから10カ月以内ですが、それ以前にも必要な手続きがあります。所得税の「準確定申告」もその一つです。
解説
「準確定申告」とは
(1)どのような内容か
現実には、死亡後ですから亡くなったお父さんが申告の手続きをできるわけがなく、相続人であるお母さんや長男、次男が、1月1日~死亡日までの賃貸収入の決算と「準確定申告」を行うことになります。
(2)いつまでか
申告期限は、亡くなってから4カ月以内です。
つまり、8月25日が「準確定申告書」の提出及び納税期限になります。
(3)どのように
計算方法は、毎年の申告手続きと同様です。
お父さんの場合、その期間が1年でなく、亡くなった4月25日までの収入、経費から所得金額を計算しなければなりません。相続人であるお母さんが、お父さんの分と併せて確定申告をすることはできません。
まだ、遺産分割が確定していませんので、相続後の4月26日から12月31日までの所得については、お母さんを含むぞ続人の方が法定相続分に応じて相続したものとみなして、翌年3月15日までに確定申告することになります。
(4)書類は
「準確定申告書」と「準確定申告書の付表」の添付が必要です。
これには、各相続人が連署で指名、住所、続柄、所得税の納付金額もしくは還付金額を記入します。
今回は、アパートの相続について遺産分割が確定していないようですので、お母さんを含む相続人の方が法定相続分で申告納税ずることになります。
(5)どこへ
「準確定申告書」と「付表」を提出する税務署は、お父さんの死亡時の住所を管轄する税務署です。
もし、お父さんとお母さんの住所が杉並税務署管轄で、息子さんが埼玉県であったとしても、杉並税務署に提出しなければなりません。
(6)相続人の青色申告の申告は
相続後の4月26日から12月31日までの申告分について、相続人が「青色申告の承認申請書」を提出したい場合は、それぞれの住所地の所轄の税務署に「準確定申告書」と同様に4カ月以内の8月25日までに提出することが必要です。
なお、死亡日により青色申告承認申請書の提出期限がことなりますので、詳しくは税務署または杉並青色申告会にお問い合わせください。
執筆: 税理士 石倉祐司