相続・贈与の注意点
第4回 借地権と相続・贈与について(4)
Q
土地の所有者である地主から私が土地を借りて、自宅を建築していました。昨年、私は地主から底地を買ってほしいと言われましたが、私は資金もなく年齢的にも高齢で借入れをすることが出来ないので、私の長男が金融機関から借入れをして底地を購入することになりました。この時、私と長男との間で借地権について、支払地代契約もしていないし、金銭の授受もありませんでした。
私から長男へ借地権の贈与になるのでしょうか。または、親子でも借地権の契約をし、地代を払わなければなりませんか?
A
親子間で借地権の贈与の認識もなく、賃貸借の継続があるが地代を免除しているいすぎないとして「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を長男が、あなたと連名で住所地の所轄税務署長に提出したときは、あなたが今まで通り借地権を持っているものとし、借地権の贈与はなかったものと取り扱われます。この申請書の提出により、借地権についての地代契約も金銭の支払いも必要ありません。
解説
長男が底地を購入して登録すると、土地の所有者は長男になりますが、そこに建っている建物はあなたが所有者のままです。外見からすると、長男の土地にあなた名義の建物が建っており、借地権があるのかないのか、また、あるとすればあなたにあるのか、長男のものか判然としません。
このように借地権の目的となっている土地をその借地権者以外の長男が取得し、長男とあなたとの間に土地の使用の対価としての地代の授受が行われないこととなった場合には、長男は、あなたからその土地の借地権の贈与を受けたものとして見られれます。あなたと長男との間では、支払地代契約もありませんし、金銭の授受もありませんでしたので、上記の図のあたなの借地権(土地評価額の70%)を長男が贈与を受けたことになります。
しかし、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出することにより贈与とはなりません。
また、地主となった長男がその建物を所有していないことから、将来、借地権の所有者は父であるあなたなのか土地の所有者である長男なのかその帰属をめぐり、相続税や贈与税の調査等で税務署とトラブルが発生する可能性があり、その防止のためでもあります。
この「借地権者の地位に変更がない旨の申請書」を提出した場合は、引き続きあなたが借地権を有するため、将来あなたが亡くなった時は、借地権は相続財産となります。
執筆: 税理士 石倉祐司