相続・贈与の注意点
第12回 両親が続けて死亡した場合
Q
昨年12月30日に父が亡くなり、今年の5月26日に母が亡くなりました。
父名義の自宅と不動産貸付物件などの財産があるのですが、母の介護等もあり、父の遺産分割と相続税申告が終わっていません。相続人は私と弟の兄弟2人です。父の相続税申告や遺産分割は、母が亡くなっている状態でどのようにしたらいいですか?
また、母の相続税申告は父の相続税申告が終わらないと出来ませんか?
A
父の相続税については、兄弟2人で亡くなった母も相続人のひとりとした3人の遺産分割協議を行う必要があります。母の相続税は、父の相続税の申告が終わらないと母の相続財産の確定ができないため、申告できません。
解説
相続税の申告は、基本的には被相続人が死亡したあと、相続人の間で遺産分割協議を行い、その遺産分割協議の結果に基づいて、各相続人の相続税額を計算して申告期限までに行うことになります。
質問では、半年の間に、両親が続けてなくなっていますが、亡くなった順に遺産分割協議を完了させることにより、次の相続での財産を確定させる必要があります。
まず、父が先に亡くなっているとの事ですので、父の遺産分割を先にしなければいけません。
父が亡くなったことによる法定相続分は、母1/2、兄1/4、弟1/4になりますが、必ずしも法定相続分どおりでなく、相続人の間で分割協議した結果でよいこととされています。ただし、分割協議がまとまらない場合は、法定相続分での申告になります。
現在は、母はすでに亡くなっていますので実際には遺産分割の話し合いには参加できませんが、兄弟二人は、自分たちの立場のほかに母の相続人という立場から父の遺産を母へ分割させる分割協議をすることができます。
父の相続税の申告期限は今年の10月30日ですが、もし兄弟二人で分割協議した結果、母へ自宅と貸付物件を相続させることになれば、「小規模宅地の特例(居住用宅地は80%、貸付物件用土地は50%の評価減額)」や「配偶者の税額軽減」が適用されるかと思います。
次に母の相続ですが、母が「父から相続した自宅と貸付物件」と母独自の財産について兄弟二人で分割協議を行い、それをもとに相続税の申告を来年の3月26日までに行うことになります。条件によっては、「小規模宅地の特例(居住用宅地は80%、貸付物件の土地は50%の評価減額)」や父の相続税を納付した場合の一部を控除できる相次相続控除が適用される可能性があると思います。
執筆: 税理士 石倉祐司